職人の技が冴える民芸箪笥の再生工程

それぞれの職人が愛情をこめて、想い出の民芸箪笥を修理

どんな工程を経て民芸箪笥はよみがえるのか。ご紹介いたします。


①金具はがし 内部清掃

 

お客様からお預かりした箪笥を、再生のために外の金具を取り外し、中の掃除を行います。古くから家で家族に親しまれてきた民芸箪笥。中の掃除をしていると、色々な「想い出」が挟まっていたり、出てきたりします。数十年前の新聞や手紙、中には通知表が出てきたことも。出てきた想い出は、当社で大切に保管し、修理が終わった際に一緒にお返しいたします。 

②木地直し

当社の技術が発揮される工程です。一つ一つの工程に愛情をこめてお客様の大切な箪笥を木地からきれいに修理します。

②-(A)  引き出しの底板の隙間を埋める 

 無垢材の底板は経年で乾燥すると縮むため、隙間が空きます。こうした隙間は中にものが挟まったりする原因にもなるため、丁寧に底板の隙間を埋める作業を行います。 


②-(B)  本体の割れた欠損部分の直し

修理を依頼される民芸箪笥の多くは、数十年ものです。中では明治時代から使われていたものも。長年家の中で使用したり、今は使わなくなって放置しているとネズミに食われた跡など、傷みがひどい場合があり、こうした割れや欠損部を丁寧に修復していきます。


②- (C)  本体前面部の縁を交換

一番傷むのは箪笥の前面部の角の部分です。箪笥の見栄えを一番左右する部分ですので、この縁を丁寧に張り替えます。この張り替え作業によって、見栄えが全く変わってきます。


②-(D)  かんながけから研磨

割れや欠損部などを修復を行い、縁を交換したら、木地としての仕上げ作業です。出っ張ったところは職人の「目」で厳しくチェックし、かんながけを行い均します。また、やすりで全体的に研磨を行い、塗りの作業にもっていきます。


③木地呂仕上(塗り)

木地の修理が終わったら、塗りの工程に移ります。川連の塗師の腕の見せ所です。

③-(A) 本体の布着せ

多くの民芸箪笥の場合、前面以外の側面はいわゆる木目となる「木地」を出しません。側面は箪笥の木地に寒冷紗というさらしのような布を着せて、その上から漆の塗りを行います。

③-(B) 下地(合成塗料)

下地から漆の塗りも可能ですが、当社では修理の価格をなるべく抑えるため、下地は合成塗料で施工します。この合成塗料を下地に使用する工程こそが、民芸箪笥の再生を高品質に保ちながらリーズナブルな価格に抑えるコツと言えます。

③-(C) 中塗り

下地の合成塗料と、本塗りの漆の密着をよくして滑らかにするため、採れたままの生漆で「中塗り」という工程を行います。樹液の原液となる生漆は、密着が強いため、下地と上塗りのいわば「接着剤」の役割を果たします。

③-(D) 本塗り

川連の伝統技術である“一発勝負”の塗り技術「花塗り」による工程で仕上を行います。季節ごとに、湿度や気温、天候の条件は異なり、職人の経験に裏打ちされた「読み」も非常に重要な要素です。他の漆器産地では、川連のような“一発勝負”の本塗りは技術的には難しく、塗りと研磨(表面の磨き)を繰り返すには時間もかかり、価格的にも高額になってしまいます。川連では、この伝統的な「花塗り」の技術により、民芸箪笥の再生をより短期間で、低コストで行うことができます。

「拭き漆仕上」も可能です

塗りの仕上げは、下地・中塗り・本塗りを行う「木地呂仕上」だけでなく、より、木地の木目の質感をそのまま活かす表に出す「拭き漆仕上」もできますので、お気軽にお問合せください。

③金具成型と研磨・塗りと取り付け

箪笥の本体の再生が一通り終わると、再生の工程も終盤に差し掛かります。一度外した金具を錆びを落とし、きれいにしてから、最後に漆合成塗料で、塗りをほどこします。再生ができない部分に関しては、ご予算により、中古品か新品を調達して新たに取り付けます。

④全体調整

最終工程で、最後は高松木工の長年にわたり培ってきた「目」がものを言います。塗りの仕上りから引き出しの具合、金具の仕上りなど、あらゆる方向からチェックを行い、お客様のもとへお届けいたします。

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